1 はじめに
2023年9月に米国北西部ワシントン州にFacebookの友人たちとの釣りのために行ってきました。そこで、17日にマーウィン湖でヒメマス釣りの後、友人のJoe.Adams氏のご厚意で、そこにあるヒメマス孵化施設を見学する機会を得られました。
見学には約20名のみなさんが参加し、職員のLuke.Miller氏から詳しい説明をしていだだけましたまたMiller氏からは、見学で聞き漏らした事項を後日メールで問い合わせ、詳しいご教示をいただくことが出来ました。
以下でその概要について、記載したいと思います。
2 マーウィン湖について
マーウィン湖は、ワシントン州南部にある湖で、1931年に農業用の貯水池としてルイス川をせき止めて作られた湖です。
広さは15.9㎢、最大水深は150mあり、湖の周囲には、公園や住宅地が点在しています。大きさのイメージとしては、桧原湖と秋元湖を足した(14.3㎢)よりも少し広い位でしょうか。
湖は、ワシントン州有数のヒメマス漁場となっており、他には大型のタイガーマスキー(パイクの1種)も釣れるようです。
シアトルからは約240kmの距離があり、車で約2時間30分位かかります。
3 管理運営組織について
孵化施設は、マーウィン湖の北岸にあり、ワシントン州政府のWashington Department of Fish and Wildlife(ワシントン州魚類野生生物局)によって、管理運営されています。
魚類野生生物局は、魚類、野生動物、および自然生息地の保護、釣り、狩猟、その他のレクリエーションの管理、野生動物の捕獲、保護、および移送、野生動物の疫病の検査および管理などを業務としています。
魚関係では、採卵・孵化・放流などの養殖放流事業や、釣りライセンスや漁場の管理などを行っています。同局が管理している孵化場は、州内に数十あり、同じ郡内にも他に5カ所の孵化場があります。
4 施設概要
マーウィン湖の孵化施設は「Speelyai Hatchery(スピーリアイ孵化場)」と呼ばれ、湖北側のスピーリアイ川が流れ込む湾の一番奥に位置しています。
図に施設のGoogleMapの航空写真を掲載しました。大きな畜養施設が中央にあり、4つの区画に分かれています。下(南)側の2区画は、6つのプールからなり、上に屋根をかけて日光を遮れるようになっています。主に幼魚の畜養に使われているようです。上(北)側左の区画は、4つの長いプールからなり、捕獲した成魚を一時入れておく場所で、こちらから取り出して、中央通路付近で採卵受精作業を行います。
北(上)側右の区画の池は、ヒメマスとは別種の魚を入れておくための池となっています。
この施設の右側にある建物が、孵化施設で、受精させた卵を孵化させある程度の大きさになるまで管理している場所です。
畜養施設の中央通路の南側には、マーウィン湖につながる堰があり、上流から引き込んだ水が常に流れています。成熟したヒメマスは、この堰を目指して泳いできます。
この他、施設の更に上流にも堰があり、そこにもヒメマスが遡ってきます。
5 捕獲から放流まで
(1)捕獲
マーウィン湖につながる堰にさかのぼってきたヒメマスを網で捕まえます。堰には、湖側と区画する板が取り付けられており、それを下げて、湖側に逃げられないようにして捕獲します。
捕獲されたヒメマスは、採卵と受精まで畜養施設北側のプールに入れられます。
マーウィン湖のヒメマスは、通常8月中旬から遡上始め、9月の第1週から2週から10月の第1週まで捕獲します。1匹のヒメマスの雌は550~1000個の卵を持っています。孵化場で獲得する卵の目標は140000個で、最大300匹の雌を捕獲することになります。オス、メスの比率は2:1ですので、オスは600匹以上となるかもしれないとのことでした。
(2)採卵と受精卵管理
畜養プールからヒメマスを取り出し、通路中央付近で採卵と受精を行います。昔は棍棒で1匹1匹気絶させてから作業を行っていたそうですが、最近は電気ショックで気絶させることが出来るようになったので、とても作業が楽になったとのお話でした。
受精させた卵は、孵化施設に運ばれます。 孵化施設に運ばれた受精卵は、定量数を測れる機械に入れてケースに分別され、更に1トレイあたり12000個の卵が入る垂直流下式の施設が入れられます。
垂直流下式の施設は、上部から新鮮な水が流下する仕組みになっており、常に新鮮な酸素を含む水が供給されています。
ヒメマスの孵化までの期間は3年間の平均61日で、孵化した稚魚の卵黄が吸収されるまで平均44日保育器で管理されます。
(3)畜養と放流
保育器で育った稚魚は、畜養プールに運ばれ、こちらで放流に適した大きさになるまで丁寧に育てられます。
こちらの孵化場では、2つのグループに分けられ、最初のグループはその年の10月に、2番目のグループは翌年の3月に放流されます。放流時の大きさは、最初のグループで、体長172mm、重さ57g、2番目のグループで体長181mm、重さ66gとなっています。
放流は、夕暮れ時に孵化場から湖に直接されます。
6 まとめ
北米のヒメマス養殖放流事業を見学して、一番感じたことは、自然保護活動の一環として、州政府が責任を持って実施していることです。日本だと、水系ごとに各漁業組合があり、各都道府県がそこに漁業権を与え、養殖放流は基本的に各組合が実施する形となっています。福島県だけでも、内水面には20を超える漁業組合があります。
日本では、古来より続く漁業慣習を尊重した形で、明治期に各地に漁業組合が設置されてきた歴史があり、北米の事例とは対照的となっています。
また、州政府が本格的に自然保護に取り組んでいるところから、釣り人のマナーもとても素晴らしいものと感じました。
※本稿はミニコミ紙「Ryuiki」第6号に掲載予定です。
こんにちわ。宮城の鈴木と申します。ブログを拝見して失礼ながらメールさせていただきました。何時もは十和田湖にてヒメマス釣りを楽しんでおりましたが、貴方様のブログを拝見して来春沼沢湖に行ってみたいと思うようになりました。ただ掲載された内容には沼沢湖でのトローリングは禁止との事でしたが、遊漁規則を調べでもその旨は無く、最近コマセを禁止したとの情報のみです。私の十和田湖でのヒメマス釣りは足漕ぎカヤックによる一本の擬餌針と数個のペラを付けて足漕ぎでゆっくりと移動するヒメトロです。これも禁止と考えて良いのでしょうか?ご教授頂ければ幸いです。
鈴木さん、コメントありがとうございます
沼沢湖では、トローリングは基本禁止です。数年前までは遊漁券にも記載されていたのですが、最近は記載がなく漁協に問い合わせても禁止とのことでした。昨年の春先、いつものように群れを探しながら湖を移動し、サビキを群れに落として釣りをしていたら、ご丁寧にも漁協にトローリングをしていると通報してくれた方がいたようでした。漁協の船がやってきて移動しないで釣りをするようにと注意して行きました。私は、ジグの様にサビキを真下に落として釣りをしていますが、沼沢湖での船釣りではブイに係留してサビキで釣る方法が一般的になっています。
十和田湖のヒメトロも楽しそうですね。あこがれますが、福島からだとかなり遠いです。来年も禁漁にならなければ、土曜日は釣行しているので、気軽にご連絡ください。
丁重なご説明有難うございます。
そうですか。サビキでも少し船が動いていたほうが釣果は上がるのですが係留で群れが来ないと厳しいですね。十和田湖はこのところ年々釣果が厳しくなっており、その原因の一つはワカサギとの競争に負けているのではないかと言われています。3、4年魚の胃の中にはワカサギが入っていて、身の色も鮮やかな桃色のものよりも桜鱒のようなオレンジのものが多くなりました。1、2年魚の時にワカサギと食性が競合していると思われます。
来春にでも一度沼沢湖に釣行してみようかと思いますので、もしスケジュールを合わせることができましたらご指導のほどよろしくお願いいたします。
因みに私は現役の頃、堂前にあった郡山の事務所まで6年程新幹線通勤しておりまして、郡山は馴染みの土地でもあります。今後ともよろしくお願いいたします。
鈴木さん、こんにちは
十和田湖でも魚が減少傾向なのですね。沼沢湖では漁協の放流失敗もあり、最盛期の1/3位の量と感じています。今年は途中から禁漁区間を設置したのですが、来年は全面禁漁になってしまうかもしれません。ここは、日釣り券がとても高く5,000円もするので、年券(26,000円)を購入していないとかなり高くついてしまうのが痛いところです。鈴木さんはOUTBACKをお持ちのようですね。私のCOMPASSと同行できる日を楽しみにしています。春先なら、私の合図で指定の棚までサビキを落とせば、確実に釣れると思います。
確かに沼沢湖は入漁料が高いですね。十和田湖はいい加減なところがあって、年限券は無く、陸からの日釣りは1000円、ボートは何人乗っても1隻2500円。尾数制限は25匹です。
釣行の際のご配慮有難うございます!その時はよろしくお願いいたします!今から楽しみです。有難うございます!
沼沢湖は一日50匹までOKです。春先は喰いがいいので、頑張れば達成可能です。私も楽しみにしています。